一週間ぐらいがたって、やっと少し食べられるようになったころ、
「青原さん、青原和子さん、お父さんが来られましたよ」
と、農家の人の低い声がしました。
和子さんは自分をさがしあててくれたお父さんと泣きながらだきあい、清子さんを気づかってか、遠慮がちに再会をよろこびあっていました。
「お父さん、清ちゃんとずっといっしょだったんだよ」
「二人ともよくがんばったね。広島は大変なことになったから、私たちもこれから田舎の親せきに世話になるんだよ」
和子さんのお父さんは清子さんのことを心配して、いっしょに連れていくことを考えていてくれたようでしたが、世話をしている救護所の人たちが
「できるだけ身内の人をさがしましょう」
と言って、家族や親せきが見つかるまで清子さんはここで待つことになりました。
清子さんはここまでずっといっしょだった和子さんと別れるのは、とても心細くてたまりませんでした。でも
(和ちゃんのように、私のお父さんもきっと私をさがしあててくれるはずだ)
という希望をもっていたので、ここで和子さんと別れるのはしかたがないと、自分に言い聞かせました。