(今日こそお父さんが来てくれるだろう。きっと来てくれるはずだよ)
そう自分に言い聞かせながら、清子さんはお父さんのむかえを待ちました。しかし、何日待っても、お父さんもお母さんもむかえに来てはくれません。
(私をおどろかせるためにそーっと来て、笑顔のお父さんが目の前に現れるかもしれない)などと期待もしましたが、結局その夢はかないませんでした。
(お父さん、お母さん。どうしてむかえに来てくれんの?)
(お父さん、家族はいつもいっしょにいようってあんなに言っとたじゃあない!)
何日かたったとき、ついに清子さんが心配していたことが現実になりました。
清子さんをむかえに来ないお父さんたちのことを調べていた救護所の人が、清子さんの家のとなりに住んでいた人をさがしあててくれ、家族の消息がわかったのです。
それは、原爆が落とされたあの日、弟は家の下敷きになってその場で亡くなり、
両親は大やけどを負って避難所に行ったものの、その夜のうちに二人とも亡くなってしまったというものでした。
清子さんは、頭を何かでなぐられたような気持ちになりました。
(お父さん、お母さん、みんなずるい! うちだけ置いて遠くへ行ってしもうて!)
(わたしゃあこれからどうなるん?)
(わたしゃあどうして一人でここにおるん?)
清子さんは、とうとう一人ぼっちになってしまいました。