いよいよ二人が別れるときがきました。
「清ちゃん、今まで清ちゃんといっしょにいることができて本当によかった。ありがとう。また会おうね。どうしても会おうね。約束よ!」
和子さんは泣いてばかりでなかなか清子さんの手を放しません。清子さんはこの先どうなるのかと思うと不安で何も考えられず、この時はなみださえも出てきませんでした。
農家を出て行く和子さんを見送るとき、清子さんは胸の中でさけんでいました。
(和ちゃん、わたしを置いていかんで! 本当はいっしょについて行きたいよー。でも迷惑かけることになるんはわかっとるけぇついて行ったらいけんのよね。人に迷惑はかけちゃあいけんって、いつもお父さんに言われとったけぇ)
和子さんたちが見えなくなった後、清子さんは初めてだれにも遠慮することなく大きな声を上げて泣きました。
その夜、清子さんはほとんど眠れませんでした。ずっとずっととなりにいっしょにいた和子さんが、今はもうそばにいません。どんな時も手をつないで、どんなこわいこともがまんしあっていたのに、今はそのつなぐ手がないのです。
清子さんは一晩中泣き明かしました。